両国高校定時制を守る会集会決議

 東京都教育委員会(都教委)は去る六月二七日、都立高校改革・新配置計画(案)として全日制二十五校、定時制三十三校を対象とする統廃合計画を発表しました。この案で両国高校定時制は上野、墨田川、小松川、小岩の夜間定時制とともに、台東商業全日制・定時制を廃校にして設置される台東地区昼夜間定時制独立校(三部制)に統廃合されることになっています。さらに、この計画は事前に対象校関係者には何の相談もなく一方的に発表され、僅か四ヶ月の提示で、一〇月には教育委員会で決定するとされています。
 わたしたちは、大変驚きました。両国高校定時制は大正一二年(一九二三年)の関東大震災罹災した生徒たちのために勉学の機会をという当時の昼間の教師たちの熱意で翌十三「私立東京三中夜学校」として設立されました。戦後は全定格差のない都立両国高校となって、経済的条件には恵まれないが向学心に燃えた生徒たちの学舎として文化的自治的伝統を作り上げ様々な分野で活躍している多くの卒業生を送り出してきました。全日制への進学率が九〇%を超えた一九八〇年代、九〇年代以降は、中卒の正規雇用が極めて厳しい労働条件の下で働く労働青少年たち、小学校・中学校時代までに不登校だった生徒、成育過程で種々のハンディキャップをもった生徒、大規模な全日制になじめなかった生徒、日本語に不慣れな外国籍生徒、帰国子女、成人の中高年齢層の生徒など現代社会のひずみを最も強く受けている生徒たちのも「自己形成・自己回復」の場として、今日も一五〇人もの生徒が学校生活を送っています。どの時代にも状況は違ってもその時々の社会的に弱い立場に置かれた青少年たちの人間形成の場としてあり続けようとしてきたことは両国高校定時制教育の伝統であり誇りであります。
 東京都の計画が、このような学校の伝統と誇りという教育にとっては本質的な事柄を全く考慮することなく、また全都屈指の交通至便という夜学生にとっての最適の設置条件を無視して機械的な数字合わせとしか言いようのない統廃合計画を策案し、しかもわずか四ヶ月という短期間に決定しようとしていることについては心から憤りを感じます。
 都教委は、夜間定時制の歴史的役割は終わった、昼間働く必要のない生徒たちだから多少通学に不便でも昼夜間独立定時制の方がニーズにあうと強弁しますが、これは六割以上が働き、また近くにあるということで様々な困難を乗り越えて通学している夜間定時制の生徒の実態をも無視した一方的な意見で到底承服することはできません。結局、経済効率と進学有名全日制の環境を整えるための差別的措置の犠牲という感を拭いきれません。
 私たちは夜学性の灯火である両国高校定時制を守るため、都知事、東京都教育委員会、東京都議会、墨田・江東区議会ほか関係諸機関に対して本日の集会に参加した全員の相違として次のような要望を提出することを決議します。


一、新配置計画(案)の教育委員会での一〇月決定を延期すること。

一、生徒の実態を具体的に調査するとともに、小中高校の父母・保護者のアンケートをとる、各地で公聴会を開くなど、計画(案)を都民に広く知らせ、その意見を集約し、それに基づいた計画(案)の再検討を行うこと。

一、計画(案)の夜間定時制も昼夜間独立定時制(三部制)に統廃合する案は、撤回すること。昼夜間定時制を設置するとしても両国など夜間定時制は廃校・募集停止にすることなく一定期間、昼夜間定時制と併存させ都民、生徒の選択の結果を待つこと。


二〇〇二年一〇月一九日

                                    両国高校定時制を守る会

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