「都立定時制高校の追加募集」に関する声明

                                                          2010年4月10日

                                       都立定時制高校を守る会・連絡会(代表 森光男)


1. 4月8日、東京都教育委員会は「平成22年度東京都立高等学校定時制課程の第一学年生徒の追加募集」を決定した。3月26日の定時制二次募集に於いて志願者が全都平均で定員の1.2倍を超え、300人余の不合格者が出て社会問題化したため、都教委として対応を余儀なくされた結果である。定時制在校生・新入生双方に負担・犠牲を押し付けることのない方法で救済措置を行うことは都教委の当然の責務である。

2. しかしながら、今回の措置は内容・やり方ともにきわめて問題の多いものである。

@ 学級減で浮いた学級分で1年生を追加募集するという今回の措置は、新入生や在校生に大きな負担・犠牲を強いる危険性がある。都教委自らが設定した「定時制学級増減基準」も無視して上級学年を無理矢理学級減させるのは、これまで各学校が積み上げてきた教育活動や人間関係などを踏みにじる暴挙であり、在校生の教育条件を悪化させかねない。

A 追加募集校が、不合格者の状況や定時制の通学条件等をまともに検討した結果とは考えられない選定になっていることである。不合格者の大多数が集中している多摩地区には1校しか追加募集がなく、これでは多摩地区の不合格者を救済することはできない。「学級減しやすい」学校を選んだだけではないかという疑念を持たざるを得ないものである。加えて、対応策があまりにも遅くすでに新年度に入っていること、周知期間が短いことなど、300人余の不合格者が都教委の思惑通りには応募してこない可能性もある。

B 学校現場との十分な協議もなく、一方的に学校に押しつけるというトップダウンのやり方も問題である。

3. そもそも今日の事態は「予想を超えた突発事故」ではない。1997年〜2002年の「都立高校改革推進計画」によって全・定都立高校を統廃合し、とりわけ定時制を半数に減らしたことに根本的な原因がある。加えて、都内の中学卒業生が大幅に増加し、向こう十数年「高原状態」が続く状況がある。中卒者数の増加は都教委自身が資料で明らかにしているところである。さらに、経済状況の悪化や高校無償化などの流れの中で、少しでも教育に関心のある人ならば都立高校志願者が増加することは十分予想できたことである。

4. 私たち「都立定時制高校を守る会連絡会」は、こうした状況を踏まえて昨年6月に都教委に対して緊急要請行動を行った。その骨子は『…矛盾は多摩地区に集中し、多摩地区の二次募集では倍率が出なかった夜間定時制はたったの一校、この傾向は数年前から続いており、私たちは何度も、不合格者を出さないための施策を求めてきました。 来年度の入試に向けて、夜間定時制において大量の不合格者を出さないための施策・・・・募集停止校の募集再開などによる募集枠の拡大』を求めるものであった。また、生徒募集定員などが決まる直前の10月にも具体的な対応策をあらためて要請した。しかるに都教委は何の対策も行わなかった。さらに、定時制志願者の増加が現実問題となった2月の第一次募集時点に至っても無為無策であった。まさに「人災」とでも言うべき事態ではないか。

5. この状況は今年に限ったものではなく、今後しばらく続くと見なければならない。今回のような乱暴かつ姑息な手段で乗り切れるものでないことは明白である。

 私たちは、都教委に対して、「都立高校改革推進計画」そのものを見直すとともに、全日制・定時制あわせた就学計画を抜本的に策定し直すよう強く要請する。その際、トップダウンではなく教職員・保護者などと十分協議しながらすすめることは当然である。さらに今回の該当校に対しては、講師時数にとどまらず教職員定数を増やし、予算を十分に手当てするなど各学校の要望に最大限応えるよう強く求めるものである。

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