統廃合問題の奥に潜む矛盾 投稿者:田井正博 投稿日: 7月16日(金)16時21分3秒
私立中学受験に関して的確な情報を提供している情報誌として「合格アプローチ」(グローバル教育出版)があります。都立高校が中高一貫校に移行する問題をお父さん、お母さんがどのように考えているかを知るのに適当な記事が掲載されておりましたので、ここに全面掲載させていただきます。なお、記事内容は8月号の130ページに掲載されているものです。これを読むだけでも、定時制統廃合の問題は定時制だけの問題ではないということがお分かりいただけるものと思います。
都立の中高一貫校誕生に思うこと
(文京区・S・K)
先日、来春から開校される都立の中高一貫校である「東京都立台東地区中高一貫6年制学校(仮称)」の学校説明会に参加してきました。現在の都立・白鴎高校で行われました。会場には非常に多くの参加者(2日間で3000人以上)がつめかけており、関心の高さを感じました。満を持してというか、都立の中高一貫校をなんとか成功させようという関係者の熱意を感じさせる説明会でした。
専用のカラーパンフレットが配布されたり、入学試験(適性検査と呼んでいましたが)の例題も用意されていました。検査問題はカラー写真も含まれ、都立中高一貫校の開設にあたり、準備費用もかなりかけているのだと感じました。
非常に多くの参加者がいた大きな理由のひとつは、やはり学費の点ではないかと思います。義務教育段階の中学校は授業料が無料であり、高校段階になっても都立高校と同じぐらいでしょうから、年額10万円あまりですむというのは、大きな魅力であることは確かです。
ただ、私が気になったのが、定員のわずか1割ではあるのですが、特別枠募集を行なう点です。たとえば英語検定2級以上の取得者とか、囲碁・将棋・邦楽・演劇などで全国大会の地区代表や上位入賞経験者など、特別の分野で卓越した能力を有した者だけに出願資格が与えられるというものです。はたして、この特別枠という設定が、一般的な公立教育の枠組みのなかで納税者である都民の納得を得られるのかどうか、おおいに疑問を感じました。それは、それぞれの分野において、その鍛練を継続できるだけの恵まれた環境にある子どもを選別・優遇する特別枠のような気がしたからです。
さらに、一般枠の適性検査問題例を見ても、45分間というかぎられた時間(適性検査Ⅰ・Ⅱそれぞれ)内で、出題例にしめされたような問題に対応することは、非常にむずかしいと感じました。来場していたほかのかたとも、「都立中高一貫校の受験を専門に教えてくれる塾で訓練しないと、とても合格しないわよね」と、ため息まじりで話しました。
鳴りもの入りで開設される感もある都立中高一貫校ですが、現実の公立小学校の生徒が、なにをどう学んでいるのか、そして、どの程度の到達度にいるのかという現状をとらえていない検査問題例ではないかという気がしてなりませんでした。
一般枠募集の試験日(検査日)は2月3日ということですが、おそらく私立中入試とは準備の内容が異なるため、わが家では受験することはないのではないかと思います。せっかく開設される都立中高一貫校が現実的な進学先として検討しにくいような状況であることを非常に残念に思っています。