都立高校改革・新配置計画(案)
八潮高校定時制の統廃合に関する都教委説明会(8/28)報告


2002年8月28日(水) 於:都立八潮高校5F会議室

司会/今日は、都の教育庁学務部・都立高校改革推進担当の前田課長さんと、石原係長さんがいらして下さり、この度の都立高校改革推進計画・新配置計画(案)について説明して下さいます。時間は1時間の予定ですが、質疑の時間を多くとりたいと思っていますので、説明のほうは、簡潔にとお願いしてあります。まず、校長から挨拶があります。

校長/水村と申します。着任早々、都立高校改革推進計画・新配置計画(案)に伴う統廃合計画の中に本校が含まれている、という事態がおきました。本日は、皆様のご要望を受けまして、都に説明会を開いて貰えないだろうか、とお願いしましたところ、快くお引受け頂きまして・・(中略)・・本校は、真摯に生徒育成していたところであります。本日は限られた時間の中での説明会ですし、お互い違う立場での質疑応答ということでありますので、必ずしも納得のいく結果にならないかもしれません。しかし、可能な限り、お尋ね頂ければ、と思っております。

前田/私ども東京都教育庁学務部・都立高校改革推進担当者は、都立高校定時制がかかえているさまざまな問題を含めて、教育状態を改革していく形でよりよい方向に改革を推進してまいりたいと考えております。皆さんにとっては、母校にかかわることなので色々ご心配もあると思います。

○京急沿線の定時制が減る・というご心配については八潮高校をなくすということではなく、一橋高校に発展的に統合していく、と考えています。物理的に遠隔地になるというご指摘もありますが、その点は、多少ご不便をおかけするとは思いますが、どうかご理解頂きたい。

○品川区内に昼夜間定時制が無くなってしまう・という点についてはあくまで、教育状態改善という見地から出された新配置計画(案)であるということ。また、八潮定時制がこれまで実践してきた事がら(学年制と単位制の両方の良さを取り入れている。今年度より3年修了制を実施、など)は私どもも評価しているということ。これらを踏まえた上で、まさに、八潮定時制で実践していたことを、よりよい環境の下で、発展実践していこうと思っているわけであります。


司会/質疑応答に移らせていただきます。どなたか、ご質問のある方、いらっしゃいますか?

●●/定時制2年の保護者です。今年から新しい給食システムになり、八潮はこの周辺地区の母校という役割を担って、給食室の改造をしたり、給食あたため機を購入したり、コンピュ−タ−を入れたりしてきました。それなのに、八潮定時自体が無くなってしまうということで大変驚いています。私は、次の3点についてお聞きしたいのですが。

(1)どういう改革を具体的に考えていたのか。

(2)うちの娘は不登校生でしたが、八潮定時は少人数制なので先生方の目が行き届き、指導も熱心で細やかです。そのおかげで、うちの子はとても元気になり、2年に進級することが出来ました。新しく出来る学校は大規模校ときいています。不登校傾向のある子だと、通学時間1時間というのはキツイと思いますがどうお考えでしょうか。

(3)『千代田地区昼夜間定時制高校』とはどういうものか、と思い、ホ−ムペ−ジを開いてみましたが、よく分かりませんでした。一体どんなイメ−ジの学校なんでしょうか。

前田/(1)点目のご質問について・・・
全・定併置校の場合、先生方の勤務時間が限られてくる為、充分な指導時間がとれない。施設面においても、全日の子供達は午後5時まで、定時制の生徒は午後5時以降、という制約がある。今回の新配置計画案は、そういった課題を解決できると思っています。

(2)点目のご質問について・・・
夜間定時制は、昭和20年代に出来、当時は5万人くらいの勤労生徒が学んでいました。現在の勤労生徒の率は、全生徒の10%に満たないという統計が出ております。本来、夜間定時制は、働きながら学びたい方のために作られた学校であるわけですから、働いていない方が殆どという昨今の状態からすれば必ずしも夜間にしなくても良い時代になってきているといえます。
 新しい時代に即した定時制づくり、ということで、東京都が検討し実践することになったのが、新たなタイプの昼夜間定時制独立校の設置というわけで、
・一つにチャレンジスク−ルを創っています。都立桐ヶ谷高校(北区)、都立世田谷泉高校(世田谷区)には、品川区や大田区の子も結構通ってきています。また今後、港区をはじめとして不登校向けチャレンジスク−ルを創り、受け皿にしようと思っています。

(3)点目のご質問について・・・
昼夜間定時制高校の具体的なイメ−ジは、次のようなものです。
・チャレンジスク−ル(不登校傾向の生徒中心)現在、桐ヶ谷高校・世田谷泉高校の2校ですが、今後、江東区や港区にも順次設置し、全部で5校創る予定です。
・新宿山吹高校型(進学、自立志向の生徒中心)今後、多摩地区にも開校予定です。
・昼夜間定時制独立校(今回計画案を出した新しいタイプの学校)多様化する生徒の実態に対応し、全・定併置の弊害を解消するため、単位制、午前/午後/夜間の三部制、また、3年で卒業することも可能な三修制を導入する予定です。


●●/チャレンジスク−ルは現在2校ですが、新聞などで報道されている不登校児は(全国)で13万人ともいわれています。ゆくゆくは(都のチャレンジスク−ルが)5校になるとしても、学校の数が足りないのではないですか。また、入りたいと思っている子が本当に入れるのでしょうか。それから、チャレンジスク−ルで教えてらっしゃる先生方に、不登校児を受け入れる伝統がなく、対応に困っているという話を聞きましたが、その点はどうなんでしょうか。

前田/東京都のチャレンジスク−ルは基本的には5校設置の予定です。品川・大田地区に限っていえば、つばさ高校や大森東高校のあとに創られる単位制高校、雑色に創られる単位制工業高校などもあるわけです。また、さきほども言いましたように、昼間働いていらっしゃる方が全体の10%ほどということで、必ずしも夜間でなければならない、という理由はない。多くの生徒は、昼間の学校への通学のほうが利が多いのではとも思われます。入りたい所へ入れるか、とのご質問ですが、学力があるから入れるというわけではなく、個々の生徒の特性にあわせて、お選びになるというのが望ましいのではないでしょうか。チャレンジスク−ルの先生方も創意工夫して授業を行ない、桐ヶ谷高校や世田谷泉高校では着実に成果があがってきていますので、安心して通って頂いてよろしいかと思っております。

●●/私は、なぜ八潮定時がなくなることになったのか知りたいんですけど。選ばれた理由を教えて下さい。

前田/全・定併置校の撤廃は出来ないとは思うが、出来る限り発展的に教育改善をしていく方向で、今回の改革推進計画・新配置計画(案)が練られたことはご理解下さい。私共としましても、八潮定時制がこれまで培ってきたもの、意欲的に推し進めてきたことがら、さまざまな特色といったものは、十分評価しているつもりでございます。その八潮高校の良さを、より良い環境のもとで受け継ぎ発展させる、というふうにお考え頂きたいと思います。

●●/今の話じゃよく分かりません。高校生の子にも分かるよう、詳しく説明して下さい。

前田/将来的な話になりますが、第一学区・一橋高校を改編する中で、全日制課程への通学意欲を持つ多くの夜間定時制通学者の存在、そして、生徒の安全性の確保、昼間に通える生徒の健全育成の視点から、より良い改善をおこなって参りたいというのが私共の考えであります。

●●/私は、本校の教員です。保護者の方が、”なぜ、八潮が選ばれたのか”と質問されましたが、もう少しその辺を詳しく言いますと、こういうことじゃないかと思います。

(1)一つには地域的なバランスを欠くということです。京急沿線の定時制は、すでに鮫洲・羽田・羽工が、統合のもとになくなることが決まっています。今回、八潮高校定時制がなくなると京急沿線の定時制が全てなくなります。この4年間、八潮・鮫洲・羽田・羽工の1年在籍者数は120名を越えているにもかかわらず、東京都はこの4校をなくし、H16年に雑色に単位制高校を創ろうとしている。新しい単位制高校の定時制は、普通科1クラス、工業1クラスで定員は全部で60名。ということは、単純に計算しても60名以上が入学できなくなります。品川・大田区のなかでも定時制の希望者の多い京急沿線の定時制を大幅に減らす必要があるのでしょうか。

(2)二つ目に、この周辺で定時制に通いたい子は一橋に通いなさい、ということになれば、かなりの生徒が通学困難になる、ということです。大田区から一橋高校に通うのは、松戸市や戸田市から通うのと同じ距離、時間にすると1時間はかかってしまいます。理論的には可能であっても、実際はとても大変なことです。その点、八潮高校は、大田区・品川区だけでなく、世田谷区や目黒区からも通いやすい距離にありますし、実際に通学してきている生徒も少なからずいます。また、近くには八潮団地も擁しています。つまり、八潮は、東京都南部の拠点になりうる”地の利”があるということです。

(3)三つ目に、多くの生徒は昼間の学校への通学のほうが良い、というようなお話しがさっきありました。通えるのなら昼間通ったほうが良いのでしょうが、私達八潮の教員は、生徒に仕事させるということに、学習以上の教育効果があると思っています。この周辺の、働きながら学びたいと思っている子、不登校を経験した子、全日制にうまく順応出来なかったり退学した子達は、八潮に頼ってきているんです!京急沿線の定時制を大幅になくしてしまうと、どういうことになるのか・・・今年度は入学者数も増えました。4〜5年様子を見て、入学者が減ったらなくす、というのでも遅くないんじゃないですか。

前田/チャレンジスク−ルでも、きめ細かい対応は出来るとおもいます。それ以上に、教育条件が改善されるという点で、今回の改革案は評価していただけると思っております。八潮のように、色々な生徒をうけいれている所では、なかなか現場は大変だろうな、とは思っています。朝や昼が苦手な子もいますし、そういうお子さんの受け皿として、一橋の夜間もしっかりPRしていかなくては、と考えております。

●●/都の方のこれまでのお話しは、”机上の論理”という感じがします。自然豊かな川があって、生き物がたくさんいる所を、護岸工事したがために生き物がしんでしまう・・ということもあるんです。メダカがせっかく生まれ育った池で泳いでいるのに、遠くにきれいで立派な人工池をつくったから、そっちに移りなさい・・なんて、ちょっと勝手すぎると思います。八潮のメダカは、八潮で育てたい。八潮定時の先生方は、とても熱心に生徒ひとりひとりのことを考えて、日々指導して下さっています。今日ここに参加してくれている卒業生達もそれぞれ個性的で優れたものを持っていますが、それを磨けたのは、八潮定時の先生方が辛抱強く見守り、導いて下さったからに他なりません。せっかく八潮の山に苗木を植えて、すくすく育ちつつあるのですから、田中先生がおっしゃったように、あと4〜5年様子を見てそれから統廃合を考えてみてもよいのではないですか。

前田/さきほども申し上げた通り、八潮の良さ、先生方の熱心な指導ぶり、そしてその成果等は、私共も十分評価しておる次第でありまして、それをよりよい環境のもとで引き継いでいく、というのが今回の改革案であることをご理解頂きたいと思います。

●●/私は、本校の父母会”ぴぃの会”の代表をしたり、不登校児の親の会の代表をしています。八潮定時の良さ、ということで色々出ていますが、今まで皆さんが言ってくださったことの他にもたくさんあると思います。例えば、うちの娘も野球部に入っているんですが、部活が盛んであるとか、生徒会が活発であるとか、文化祭を毎年行なっている・・私達ぴぃの会も参加して、模擬店を開いています・・とか、それは長い年月をかけて培ってきた八潮の『文化』と言ってもいいと思います。都の方のお話しを先ほどから伺っていると、新しい学校で八潮のやり方を受け継ぐということですが、果たしてそれが実現出来るのかな、と危惧しております。私、学校の評価委員もやって参りましたが、実質的な評価も含めて、現場の先生方や生徒達の声をよく聞いていただき、長い伝統の中で営々と築かれてきた”八潮の文化”を、是非残して頂きたい!

前田/我々としては、現場の声をよく聞いて改革していっているつもりですが今後も、現場の方々のご意見を最大限活かしつつ、一橋に引き継いでいく所存でございます。今回のように学校関係者や関係機関等へ出向き、説明を行なうとともに広く都民の皆さんの意見をお聞きした上で、10月に新たな実施計画を策定する予定です。都は10月策定をふまえて、より具体的な改革案を協議しております。全・定併置の方が時間的制約が大きい・・体育館、図書館の利用などをとっても、お互いがより利用しやすいよう改革していかなければ、と考えております。

●●/本校教員です。八潮定時は、今年、入学希望者が多く、4人の希望者を切らざるを得なかったんです。これは、我々教員が本当に一生懸命、近隣の中学に出向いて八潮定時の良さをアピ−ルしてきたこともあるんですが、これまでの長年の地道な教育活動が、地域で評価されるようになった結果だと思うんです。なぜ、この時点で切るのか、分かりません。八潮に入るつもりだった子が一橋に入るかといったら、それは疑問です。8年かかって去年卒業した子もいる。本校だから出来たことなんです。独自性もあり、地域の需要も実績もともにある学校を、なぜ?!・・・教員も頑張っているんです!もう少し、やらせてみて下さいよ。
   
前田/現場の教員の方々のご努力は、我々も評価しているところであります。これまでの実績を損なうことなく、より良い方向で発展させることが大切だと、我々も考えております。

司会/そろそろ、予定の1時間が過ぎようとしています。他にご質問のある方、あと2名ということで、区切らせて頂いてよろしいでしょうか?

●●/私は八潮定時の卒業生で、同窓会の副会長をしている者です。千代田地区昼夜間定時制の代表校に、なぜ一橋高校が選ばれたのか、教えて下さい。

前田/通学の便の良い所を対象校にしています。

●●/私は、東京家庭教育研究所主催の家庭教育学級で学んだことがあるんですが、その時教わったのが、『親は、子供の目の高さで話をしたり聞いたりしなさい』ということなんです。お役所の方は、どうも大人の目の高さ、考え方をしているんじゃないか、と思います。うちの子は初め、一橋高校に入ったんですけど、通学距離がありすぎて嫌になってここを選んだんです。定時制は、近いからこそ、その子の良さを生かしてくれるのだと思います!

●●/僕は、82年という伝統ある八潮定時制の同窓会副会長です。あなた達は、改善、改善といっているが、子供にとってはちっとも改善になっていない。頭の中で考えているだけのことなんだ。納得なんか出来ない。絶対反対!!

前田/新たな昼夜間定時制高校の基本的な考え方は、総合学科の特徴を取り入れ、学年性のメリットを残した単位性を有し、午前・午後・夜間の三部制を設置し、3年での卒業が可能な三修制を導入していく学校を創るということであります。八潮定時の三修制は、私共、評価はしていますが限界があるとも思っています。
そこで、新たな、より良い環境のもとで、八潮定時がこれまでやってきたこと、やろうとしていることを実践していくつもりですので、どうかご理解下さい。


司会/時間も過ぎましたので、そろそろ・・・

●●/最後に、子供たちの手紙を預かってきているので読ませて下さい。
  《3通の手紙を読み上げる》

司会/予定の時間をかなり過ぎましたので、今日の説明会はこれで終わりにさせて頂きたいと思います。

   校長から、一言ご挨拶があります。

校長/質問して下さったのは、八潮の関係者の方々です。説明して下さったのは、東京都の施策を担う方々です。立場が各々違うので、十分理解しえないに違いないということは始めに申し上げました。
 しかし、こうして互いの立場で、言葉を尽して話しあうということがとても重要だと思います。(以下略)


※この採録は、書記がおこないました。 録音テープを用意しておらず、手書きの記録に頼ったので、細部の言い回しや内容等に多少の違いがあるかもしれません。悪しからず、ご諒解とお許しをいただければ幸いです。



 各校一覧に戻る

 トップページに戻る